下町すみだ      築70年の牧師館暮らし。犬と庭と日々の糧。              
by Annes_Tea
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宮 葉子 yoko miya
文筆家+牧師の奥さん

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子どもの本専門店「ひつじ書房」

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本物の「ひつじ書房」は神戸にある。
子ども時代、本との幸せな出会いの多くは、この場所で与えられた。村岡花子訳『赤毛のアン』シリーズを買い揃えたのもここである。
小さな店内は、棚の上から下まで子どもの本で埋め尽くされている。当時は上にいくほど高学年向けの本で、一冊ずつ背表紙を眺めては、早く読んでみたくてどきどきした。ついにケース入りの『アンネの日記』を手に入れたときの誇らしさといったら。真っ白な布張りの表紙に金文字でタイトルが書かれただけの装丁は、それまでのどの本よりもシンプルで、大人びて見えた。


ここ何年か、年に一度は神戸に行くことが続いた。「ひつじ」はJR摂津本山駅のホーム沿いにあるので、三宮に向かう車窓からも見える。
あ、あるある、と毎年確認だけはしているのに、ほんの少しだけ、心配な気持ちがいつもある。店主には失礼ながら、まだあるかしら、などと思ってしまうのだ。
ある時には、どれだったか「ひつじ書房」の看板のひと文字が欠けていた。翌年には、ちゃんと新しくつけ変わっていてほっとした。
大丈夫、「ひつじ」は元気、健在だ。


2年ほど前、尼崎にいる甥っ子に本を贈りたくて、実際に店まで足を運ぶことにした。行けるうちにもう一度「ひつじ」に行っておこうという気持ちもあった。二人いた客が帰り、女主人とわたしだけになると、本選びを助けてもらいたくて話しかけてみた。なんとはなしに話は子どもの本談義になったので、自分が子ども時代の常連だったことを明かした。
「そのころはわたしも若かったのでしょうね」
と白髪の混じる女主人は言った。子どものわたしは本ばかり見ていたせいか、店の奥のレジにどんな人が座っていたのか、まったく覚えていない。でも、きっと、この女性からわたしは何度も本を買ったのだろう。


どうしても聞きたかったのは、店名の由来である。
というのも、聖書を読む者にとって、「羊」というのはなじみが深く、日々、目にする文字だからだ。たとえば、子羊と言えば主イエス・キリストを指す言葉だし、わたしたちは羊にたとえられる。教会付属の幼稚園などによく「ひつじ」の文字がついているのもそのせいだ。
聖書だけはなく、飼い犬がボーダー・コリーというところにも、自分と羊とのつながり感じてしまう。ボーダーは本来羊飼いの働きをするワーキング・ドッグである。河川敷で鳩の群れを一羽たりとも逃さず追いつめていく様子を見ると、一度くらい本物の羊を追わせたいなぁ、と思ってしまう。
とにかく、「ひつじ書房」の「ひつじ」にはどんな意味があるのか、羊好きとしてはどうしても気になるところだ。


「子どもの本屋なので、子どもたちに親しまれている動物の名前をつけようと思った」のがきっかけなのだという。候補の動物を詳しく調べていくうちに、昔から羊という言葉には深い意味があることがわかったのだという。
羊は羊飼いがいないとうまく育たない。時には谷底に落ちてしまうようなこともある。そのあたりを、よきガイド者としての子どもの本屋の役割と重ね合わせて、いちばんしっくりくる動物だったのが羊だったそうだ。
「うさぎ書房」や「りす書房」ではなくて本当によかった。


新しいお客さんが入ってきたので、話もそこそこに終わってしまったが、「ひつじ」のなぞを解明できたので大満足だった。甥っ子へは、フクロウにまつわる冒険を描いた父と息子の物語を包んでもらった。レジのわきにあるコピーの束に目をとめると、
「わたしが長年、本について考えてきたことはここで全部言ってくれています」
と言うので、思わず買ってしまった。児童文学翻訳家の脇明子さんが「子どもの読書を考えなおそう」という趣旨で連載されていたものだった。
「ここにも大切なことが書かれていますよ」
と言って手渡してくれたのは、岩波書店の「図書」、特集は石井桃子さんだった。まだ石井さんが亡くなる前だった。


店主と言葉を交わした時間は、ほんのわずかだったけれど、石井桃子さんを通しても、わたしは「ひつじ」からのメッセージをこれまでもたくさん受け取ってきたのかもしれない。クマのプーさんもノンちゃんも、やっぱりみんなここで出会ったのだから。
自分だけの本棚を心の中に持っていると、それは思いがけない時に支えになってくれる。心の本棚のいちばん下に並んでいるのが、わたしの場合は「ひつじ」で買った本のように思う。

時代が変わっても、子どもたちが「ひつじ」で素敵な出会いを続けられるといいな。
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by Annes_Tea | 2008-11-25 19:57 | 向島こひつじ書房の本棚
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