宮 葉子 yoko miya
文筆家+牧師の奥さん
参加者常時募集中! 「大人のための子どもの本の読書会」 墨田区のふたつの拠点を中心に、子どもの本のロングセラーを読むゆるやかなサードプレイス。幅広い年代が参加されています。 つながる・祈る・分かち合う「pray&hopeプロジェクト」を主宰。月に一度、女性たちの集まりをもっています。 ○詳細はここから メールは以下のアドレスに★を@に変えてお送りください。 booksheepbook☆ gmail.com 牧師館の住人たち (profile)← わたし ゴエモン先生 メル 墨田聖書教会Blog 文章・画像・イラストの無断転載は禁止です。引用の際には必ずご連絡ください。 外部リンク
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←寒くなってきましたね。朝、わがやの柱時計がよく止まります。手巻きの柱時計って、気温が10度を下回ると、動くのを止めてしまうことがあるのだとか。本当ですか? 機械とは会話をしないとね、と言いながら、忙しい朝の時間にせっせと夫がねじを巻いています。 年越し派遣村の働きが、少しずつでも進んでいるようですね。すごい、すごい。専門知識と志のある人たちが集まってひとつになる時、状況を動かす力が発揮されるものなんだな、とあらためて。ただ、“最後の一人まで”となると、本当に大変なことだと思う。今回の働きの中心をになう「自立生活サポートセンター・もやい」については、わたしも昨年ネットで調べたことがある。いよいよ相談に行こうかしらと思っていたところ、事態が急展開をして行かずに済んだ、という話を少し。長いのですが、おつきあいください。 ことの発端は、「どうしよう、家がなくなっちゃう」というSさんのひと言だった。いつものように朗らかな雰囲気で祈り会に来たSさんだったが、分かち合いをしている時に、こんな発言が飛び出したのだ。個人的なことなので、詳しくは話せないが、要点はこうだ。都営住宅の更新時期がきたので、いつものように手続きに行ったところ、窓口の人が書類をあれこれ見たあげく、ひと月以内に部屋を明け渡すようにと、突然、勧告されたという。えっ、そんなことあるの? ひとり身のSさんは、終の住処として15年ほど前から都営住宅で暮らし続けてきたのに。 今でも時々仕事をしている元気なSさんだが、さすがに80歳近いので、話の筋がこんがらがって、今ひとつ状況と問題点がつかめない。翌週、再び祈り会に来たSさんに状況を尋ねてみると、立ち退き期限が刻一刻と迫る中、どうしていいのかさっぱりわからずにいるだけのようだった。おせっかいを焼かせてもらっていい? Sさんとも話し合って、まずは都営住宅の仕組みからネットで勉強してみることにした。同時に、都営住宅に詳しい人を探す。このあたりは、だれかが困った時に奮起するクリスチャンの特性のうれしいところ。良きサマリヤ人ならぬ、良きおせっかい人がたくさんいるのですね。ほどなく専門知識を持つ人と連絡がとれ、おかげでSさんの状況がだんだんと見えてきた。 簡単に言うと、使用継承権にからんだことだった。名義変更をすれば住み続けられる可能性はありそうだったが、それにしても手続きやら書類やら、複雑過ぎてわたしの頭でもなかなか理解できない。まして、高齢のSさんが、窓口で通りいっぺんの説明を受けてもわかるはずがない。Sさんは経済的な理由から新聞をとっていないし、テレビもない。インターネットなんてもちろんない。派遣村に来た人たちは、新聞やネットで情報を知ったとインタビューで答えていた。でも、高齢者の場合、そういった現代のライフラインを持たないことも多いのだから、よくわからないまま突然家を失うこともありうるわけだ。 ある時から、都営住宅の使用継承の基準がとても厳しくなり、母子家庭などは窮地に立たされているらしい。ただし、特例があり、Sさんは高齢者ということで使用継承権を獲得できそうなこともわかってきた。どうする? とにかく二人で一緒に窓口に出かけることにした。それにしても、わたしたちの関係を聞かれたらどう答えようか。Sさんは「教会の牧師夫人です」と答えると言う。たぶんそれって何よ、と言われるのがおちだろう。本当のこと、つまりわたしたちは友だちなのだと言えばいいよね。 どう見てもでこぼこコンビの二人が都営住宅の窓口に行くと、怪訝そうな顔をされた。そうして、Sさんを見るや、「退去でしたよね。今日は手続きですよね」と言う。そうじゃなくて、住み続けたいので来ました、と私が言うと、相手はますますわたしを不審そうに見る。でも、関係までは聞かれずにすんだ。Sさんと立てた作戦はこうだ。ことばを控えること(うるさがられないように)。でも、住み続けたいということ、他にはどこにも行く場所がないということだけは、力強く、きちんと伝えること。もうひとつ、窓口の相手に対して、感謝を示すこと。最後の一つは、ヘンテコな作戦だけど、係の人に親身にかかわって助けてもらわなければ、わたしたちの半端な知識ではどうにもならないからだ。 最初、窓口の人たちとのやりとりは難航をきわめたのだが、とにかくこの作戦を忍耐強く続けていくうちに、なんと、風向きがあるところで変わり始めた。要するに住み続けたいわけですね、とか何とか言い出したのだ。なんで気が変わったのかな? そうして、結果を言うならば、大団円でめでたし、めでたし、である。結局、この日から2か月近くかかって、Sさんは使用継承を認められた。 でも、この日の窓口で思い知らされたのは、係の人たちは、住宅に困っている人のために存在しているわけではないということだった。こちらからしつこく尋ねなければ、住み続けるための方法を教えてもらえなかったし、たとえその方法を聞いても、高齢者には内容を理解することがとても難しい。わたしの隣で話を聞いていたSさんに後で聞くと、ちんぷんかんぷんで、さっぱりだったと言っていた。そうよねぇ。本当に難しい話だったよね。それに、「わたしたちは○○さんが住み続けられるように勧めているわけではありませんからね。ただ情報を伝えているだけです」なぁんて、念を押されたし。都営住宅って、いったいどんな志で存在しているんだろう。まあ、相手が何と言おうと、とにかくわたしたちの作戦を完遂すべく、最後は、しつこくしつこく係の人にお礼を言って、二人で手をとりあって喜んで見せた。もちろん本気で安心したのだけど、ちょっと大げさだったかな。 ↑メルの第二のおうちは車の中。車の中にいると安心する様子です。わたしは中学時代、車の中だと暗記がはかどるので、期末試験前、車にこもったこともありました。変ですかね。
by Annes_Tea
| 2009-01-15 00:41
| 牧師館で暮らす
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